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薄情な奴といわれるかもしれん
濁流に飲み込まれて消えたおとんの顔と、魔神に殺されたおかんの顔、記憶が鮮明やないんや
おとんの顔は完全に、おかんも最期のヤマネコの姿ははっきり焼き付いてても普段の顔は半分以上ボケとる
もう8年くらい前の記憶や。魔神の姿とかその時の状況がショッキング過ぎたのと、形見になるもん何一つ持ってこれずにここまで逃げたうちはそーなっても仕方...なくもないな。うん。
代わりに魔神の姿だけは忘れようとも忘れられん。あんなの他に居てたまるか
まあそんなことは本題やない。
時折夢に見るおとんとおかんの事、なんか顔がオーグンはんとアリアル姐さんが重なって見えるようになっとるんや
種族どころか性別違てるがな!
まあアリアル姐さんはオネエやし傍から見ても美人さんや まあわからんでもない
オーグンはんリルドラケンやぞ? そらおとん爬虫類系の顔だったかもしれんけど爬虫類系の顔どころか爬虫類の顔やんけ!起きてジブンにツッコミいれたの何度あったか
...原因はわかっとる シーツ干し場の一件や。
直前の仕事でオーグンはんに失望して、故郷からこの街まで身一つで逃げてきたころに戻りかけて...そんで。
悲しかったけど涙も出ない、馬鹿な女やもう二度とジブン以外に期待なんてするなと腹ん中で言い聞かせとった時に来たのがオーグンはんと姐さんやった。
オーグンはんの言うことも理解できなくもない。理解したくなくても。
うちかてじゃあ家族が、友人が こ、恋人とか うん。そういうのが自分の身一つ犠牲に出来て助けられるんなら飛び出すと思う。きっと頭で考えるより先に動いとる
『命が失われるのが怖い』
立ち位置や向ける相手が違うかも知れんけど。きっと、ううん。
根幹では この一点においては明確に繋がっとる。同じもんや。
でもな、でも...
うちは一緒に生きたかったん。
無我夢中で逃げて生き延びて、冷静さを取り戻した思うたらおかんの断末魔の声が頭に響く
わからんやろ。平気でそんなこと意気揚々と語る彼奴には
想像もしたことないんやろ。死んで本望なら死んだ後の事なんて考えなくてもいいからな
もうどうしようもなく腹が立った。
あのわしわしと頭に乗せてくれる掌の温かさまで憎うなった。
即刻軽蔑してもろて距離とってもらお 思うて話せる分全部ぶちまけた。
......せやった。オーグンはんも、何より姐さんは筋金入りのど善人やった。
なんや結果的にうち、二人の善意に付け込んでしまった形になってしもた。
姐さんには、本当罪悪感すら感じるくらい。あの時を振り返るだけで羊皮紙に涙の染み作ってしまう。とても嬉しくて、とても温かくて。
信じてもらえるまで来るから?ほんますんません。多分真正面から顔見るだけで泣きそうなくらい堕ちとる。これで信じてないとか嘘や。なんやあの母性の塊のようなお人は。
オーグンはんは 振り切れんかった。いや、最初からそんなことできんかったんや
全部受け入れようとして 全部飲み込んでそれでも傍らにいてくれようとする姐さんとちごて厳しいお人ではあるけれど
うちのことそこまで見ててくれてた 受け止めてくれる人やった。
おとんが生きてたら、きっと 人の目見て話せんうちに同じこといったやろな...
状況はそれより格段に悪化しとるけど。こわがらんように生きれるんかな。それに...
──うちに生きる意味見つかるんかな──。
死にたくないから 死ぬの怖いから それで漫然と生きてたけれど
すこし ほんの少しだけ前に向けたかもしれない。 前に向けるように寄りかかるけれども
【 あの二人といたいから 】
――今はそれでええやろか?
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