思い出したい時もあるから、書いておこう。
最初はただ、いつもよりマトモな食べ物と寝床が恋しくなっただけだった。
報酬目当てにマギテック協会の製品テストに応募して、採用された。
あの日の気持ちをどう表現すれば正しいのかは、わからないけれど…
私には、想像を絶する体験だった。
クリス、と呼ばれた彼…彼女?に、グラスランナーの女の子シェリカ。
ガンを自在に扱うゼトに、身のこなしが凄かったエルフのカサンドラ。
未熟な私が奇妙で強い魔動機2体に立ち向かえたのは、あの人達の強さと…
こんな私を、初対面の私の背中を押してくれたから。
期待の目だとか、労いの言葉だとか。
そんなものは3年ほど耳にしたことがない。…そも、私が期待してなかった。
だからあの時、なけなしの力を出し切って戦えたのだろう。
戦いが終わった後、頭も体も凄まじい倦怠感に襲われたけれど悪い気分ではなかった。
淡々とした小さな仕事とは比べ物にならない報酬。
私の知識と技術、魔術の研鑽が最も効率的に行える環境。
……そして何より、冒険者の皆と一緒に食卓を囲めるひととき。
楽しかった。素朴な感想だけど、これに尽きる。
疲れを癒やしたら「百の剣亭」で依頼を探しにいこう。
火照った胸の中が冷める前に、もう一度。 |